2009年07月27日

【ウラ物語Vol.13】第5回

【ウラ物語Vol.13】第5回

第2部 足跡  ※第1部はコチラから ※第3部はコチラから ※第4部はコチラ
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第1話(7月10日) 引き金
第2話(7月13日) 第1回
第3話(7月17日) 第2回
第4話(7月20日) 第3回
第5話(7月24日) 第4回
第6話(7月27日) 第5回
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成人式で、檀上から読み上げた謝辞の一文。
「海外のアーティストや美大生も参加できる国際的なプロジェクトにしたいです。」


その5年後。2008年に、早くも、海外の美大生が甑島にやってきた。

「2007年に藤原 勇輝さんというアーティストのアシスタントでスペインに行ったんです。
スペインまで行って、のこのこと帰ってくるわけにはいかないと思って。
KOSHIKI ART PROJECTの冊子を持って、在バルセロナ日本国総領事館や、
知りあいのところに説明に回ったんですよ。

『スペインの宣教師が鹿児島にきた歴史もあるし、甑島に学生来れませんかね?』
って感じで」

【ウラ物語Vol.13】第5回
Google Earthバルセロナより引用

アーティストを招き、その土地に滞在しながら作品制作を行う事業のことを、
「アーティスト・イン・レジデンス」と呼ぶ。
KOSHIKI ART PROJECTの活動も、レジデンスに含まれる。

アートに対する意識は、日本よりもヨーロッパの方が圧倒的に高い。
大きな展覧会に発展していく為には、海外とのつながりが必要だと思っていた。

実際に、日本の田舎のきれいな島で展開されるレジデンスに、
興味を示してくれる人も多かった。


実際に腰を上げてくれたのがバルセロナ大学の教授だった。
バルセロナ大学で版画を学んでいるスペインの女子大生4名が、
2008年KOSHIKI ART EXIBITIONに参加することになったのである。




■文化の差


地球の裏側から、小さな甑島にやってきたスペインの女子大生。
言葉の通じない彼女達との共同生活&制作活動をすることに、どんな苦労があったのか。

【ウラ物語Vol.13】第5回


「言葉の壁はあんまり感じなかったですね。絵を描いたり、片言の英語でやりとりできたんで。
それよりも、些細な生活の価値観の違いが大変でした。

島の生活と、スペインの生活習慣はいろんな意味で大きくかけ離れていた。

「夜騒いだらダメ」と伝えていても、ガンガンに音楽をかけて踊りだしたこともあった。

時にこんなやりとりもあった。「ヌードビーチないの?」と女子大生。
「ないよ!そんな事したらつかまるよ」と林太郎。
たまいしの浜で裸の女性が寝ていたら島中の人がびっくりするだろう。

食事の習慣も違う。スペインでは、ご飯は必ずみんなで一緒に食べるのが常識らしい。
「先に食べてて」というのが許されない。
「何でみんなで一緒に食べないの?」と詰め寄られることもあった。

「もう本当に、困ったら音楽かけてみんなで『盆おどり』で仲直りです」

音楽と踊りは、世界共通だ(笑)


■島VS世界

スペインのエステルとマリアが2人で制作した作品が、下記の写真だ。
空き家の中は、鬱そうとした竹林。その中心でカタカタと音をたてながら、
白黒の映像が流れていた。

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いつか流行ったホラー映画のように、画面から誰かが飛び出てきそうでドキドキする。

同じくスペインのイレーナとアイナが制作した作品も紹介したい。
芋虫のようなオブジェが暗い家の中で輝いている。

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文化も言葉も違う人達が生みだした作品から、日本人のそれと同じように、
島の人達はメッセージを感じ取ろうとする。普段の生活とは違うコミュニケーションのやり方で。


着物とか、富士山とか、そんなわかりやすい日本の象徴ではなく、
もっと自分たちに無意識に染みついたレベルで、異国との差を思うのである。
島の人達は言う。「やっぱり何かが、日本の作品とは違ったよね」と。


下記が2008年の日本人の作品たちである。あなたも何か感じるだろうか?
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たまたまこの年、わかりやすい作品が多かったのもあるが、
やっぱり同じ日本人の作品は、自分とべースが一緒だなと分かる気がするのである。


今までは、島VS島外の構図で、島の特徴を感じていた。豊かな自然、文化、言葉だ。
しかし、海外の作品が入ってくることで、一気に島VS世界になる。
比べるものが変わると、今まで自分があたり前だと思っていたことが、あたり前じゃなくなることを知る。

この年の展覧会は、「今までで一番よかった」と評判をよんだ。
暗黒期(2006年、2007年)のリベンジは、2008年に果たされたのである。


■2008年の開催を終えて

2008年の開催で、今までと大きく変わったことをまとめると次の2つである。
1つは、姉の純子の参加。もう1つは世界への挑戦である。


-外からの目が、中を変える-


姉の純子が本格的にスタッフに加勢したのは2008年からだ。
じょうやま音楽祭の発足など、純子の参加がこのプロジェクトにもたらした変化は大きいのだが、
一番は宣伝・広報に専念できるスタッフができたことだと思っている。

アーティストが、作品の制作もしながら宣伝・広報の役割も担うのは負担が大きい。
しかし、せっかくいいものを作っても足を運んでもらえなければ、その先の広がりが見込めない。

宣伝、広報に頭を悩ませるのは、伝統工芸、農業、など小さな団体であればどこも同じではないだろうか。

事務局兼アーティストであり、東京在住である林太郎に、鹿児島のでPR活動は限界があった。
一番足を運んでもらえるはずの鹿児島県の人達に、
なかなかプロジェクトが広まっていかなかった現状を、
ケンタが宣伝・広報を企画、純子がそれをサポートする、という形で打開した。


2008年、プロジェクトは多くのマスメディアに取り上げられた。ポスターも各所で目にするようになった。
テレビの取材が入り、特集を組んでもらったのもこの年だ。
今までは、「若者が島で何かやってる」と遠巻きに見ていた人達も、
テレビや新聞で頻繁に目にすることで、プロジェクトに対する見方が変わってきた。


―世界の壁―


スペイン人を島に呼んできた感想として、林太郎は時期尚早だったと語る。

「『何でこんなに人が来ないの?1000人くらい来てもおかしくない展覧会なのに』って言われました。
『あなたたちのインフォメーションが足らないんじゃないの?』
って」

同じ展覧会をしても、ヨーロッパと日本では来場者数の桁が違う。
背景には、政府がアートにどれだけ力を入れているかの違いがある。

「ヨーロッパの人達は、義務教育の段階でアートに対する力の入れ方が
日本とは全然違ううんですよ。

学生は無料で美術館を見ることが出来たり、子供たちの美術館めぐりに、
大型バスが走ったり。アーティストに対する政府のサポートも雲泥の差です」

そんな環境で展覧会をやっていれば、人が来るのはあたり前なんだろう。
スペインの彼女らが展覧会の事務局に求めているのは、
多くの人に足を運んで作品を見てもらうことだった。

もともと、KOSHIKI ART EXIBITIONはふるさとの為に企画、実施されたプロジェクトだった。
大型観光地のように多くの人に来て欲しい、というよりも
島の人達に満足して欲しい、気づきをもたらしたい、という思いが強かった。
しかし、地球の裏側から作品の制作にやってきた人に、地域活性化は理由にならない。

島の人との交流という内側の側面と、展覧会という公に開かれる外側の側面。
双方をどう両立させるかは、今後の課題であり要になるのではないだろうか。


――――――――――
以上が、過去5回の全容である。
とてもすべては書き切れないのでポイントを絞ってまとめている。

こうして振り返ると、どんな経験も無駄ではなかったのだとつくづく思い知らされる。
関わってきて頂いたすべての方々のおかげで、今年のASAHI ART FESTIVALへの参加、
自治体フェア2009のグランプリ受賞につながった。スタッフに代わって、この場を借りて御礼を申し上げたい。

さて、これだけプロジェクトが成長、変遷していく中で、
その周囲にいる人たちには、どのような影響を与えてきたのだろうか。



第3部へと、そのバトンを受け渡して第2部のしめくくりたい。

【ウラ物語Vol.13】第5回
※2008年参加者メンバー集合写真

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